2004年12月12日

「センセイの鞄」



    

    川上 弘美

    センセイの鞄



 川上弘美センセイの鞄
 やっと読み終わっただよ(^^;
 じつは買ったのは2ヶ月も前で、ずっとほったらかしたまんまだった。さらに読み始めてからも一気に読まずに、途切れ途切れ。連作短編集(だよね?)ってことで怠け気味だった。
 で、感想だ。
 
 小説において何がもっとも重要であろうか。
 ストーリーだろうか。人物造形だろうか。比喩や隠喩だろうか。
 私は、リズムだと思う。いかに面白いストーリーであっても、リズムの悪い文章であれば読めたものではない。
 川上弘美さんの文章はとてもリズムがいいのだ。彼女の作品はこの「センセイの鞄」が初めてなのだが、ぜひほかの作品も読みたい!そう思わせるほどに私は感心してしまった。上手い。
 
 どういうお話かをここで紹介しようとは思わない。
 ツキコ(主人公)とセンセイの淡い恋模様が描かれている。ただそれだけだからだ。くっついて離れてを繰り返す安手のドラマのような展開などない。ツキコとセンセイの関係が淡々と描かれているだけだ。もちろん最後には結ばれる(肉体関係を持つという意味ではない)という展開にはなるが。
  
 とにかく読んでいて、酒が飲みたい、と思った。二人とも酒好きで、センセイと会っているときはほとんど酒を飲んでいる情況なのだ。そして湯豆腐だのぶりの照り焼きだのをおいしそうに頬張る。
 じつは私は酒が飲めない。まったくもって弱いのだ。ビール1缶で顔が真っ赤になってしまうぐらいで、飲むにしてもアルコール度数の低いもの、サワー系のような。日本酒など飲もうものなら、お猪口一杯でも天と地が逆さまになるくらい。
 とにかく読んでいて、酒が飲めるようになりたい、と思った。酒好きの方はたまらない作品じゃないかな。

 あとけっこう笑える。ガハガハ笑うというのでなく、ニヤニヤだ。読んでいる最中私は何度もニヤニヤした。ツキコとセンセイのやり取りが愉しくて仕方なかった。いかにも先生然としたセンセイの厳粛な言葉遣いと講釈に、「はあ」と相槌を打つツキコ、とかね。

 印象的なシーンはいくつもある。いま思いついたものを適当に取り上げてみると。
 たとえば、
 「こおろぎ」での、こおろぎの鳴き声とツキコの動悸の描き方。
 上手いよねぇ。ほんと上手いよ。こういう描写を自分も書けたらなぁ、なんて思った。
 読点の打ち方もいい。「公園で」の冒頭。


  デートに誘われた。センセイに、誘われた。


 「センセイに誘われた。」じゃダメなんだよね。これがリズムです。

 「キノコ狩 その2」でベニテングタケを食べてラリっているようなところなどはまさに純文学だね。


  「いい胸ですね」センセイは言った。芭蕉の句のことを説明するのと同じ
  ような調子である。くすりとわたしが笑うと、センセイもくすりと笑った。
  「いい胸です。いい子だ、ツキコさんは」
  そう言って、センセイはわたしの頭を撫でた。



 好きだなぁ、このシーン。
 挙げ始めると尽きないね、きりがないね。もうやめます。

 こういう味わい深い文章が読めるというのは幸せだ。純文学とエンターテインメント小説の決定的な違いか・・・。
 上級者向けかな。普段から小説を読んでいる人には絶対愉しめる。このリズムだけで十分に。

  rino的評価 84


 次回は村上春樹「風の歌を聴け」を。
posted by rino at 23:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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